シマトネリコは、その美しい見た目と成長の速さから、多くの庭に植えられています。
しかし、「悪魔の木」と呼ばれることもあり、地植えすると後悔する木としてもよく挙げられます。
その理由は何でしょうか?
今回は、シマトネリコを庭に植えることのデメリットとメリットについて詳しくお話しします。
シマトネリコを庭に植えるデメリット
シマトネリコは一見美しく魅力的な木ですが、実際に植えると多くの問題が発生することがあります。
以下に、その主な理由を詳しく説明します。
成長が早く管理が大変
シマトネリコは非常に成長が早く、1年で50cmから1mも伸びることがあります。
これにより、頻繁な剪定が必要となり、管理が非常に手間です。
私の近所でも、新たにシマトネリコを植えた家では、1年で30cm以上伸びたという例があります。
また、長年植えられたシマトネリコを切った後も、再び新しい枝が次々と伸び、管理が追いつかない状況が見られます。
1年中葉を落とし掃除が大変
シマトネリコは常緑樹とされていますが、実際には「半常緑樹」です。
これは、常に一定の葉が存在するものの、季節を問わず1年中葉を落とし続けるという特徴を持っています。
特に冬には茶色く変色して大量に葉を落とすため、掃除が非常に大変です。
葉っぱが小さいため、一度に大量に落ちると掃除が難しくなります。
例えば、ショッピングモールに植えられているシマトネリコでは、根元に大量の茶色い葉が積もっているのをよく見かけます。
さらに、成長するにつれて枝が増え、その分落ちる葉の量も増加します。
これは年々掃除の手間が増えることを意味します。
隣家に近い場所に植えた場合、落ちた葉が隣家の庭や通路に散らばり、近所迷惑になる可能性もあります。
シマトネリコの掃除は毎日の作業が必要になることが多く、他の落葉樹と比べると管理の手間が非常にかかります。
カブトムシやハチが寄ってくる
シマトネリコにはカブトムシやハチが好んで寄ってきます。
虫が苦手な人にとっては大きなデメリットです。
特にカブトムシはシマトネリコの樹液を好むことで知られています。
2021年には、小学生がシマトネリコの樹液がカブトムシに好まれることを研究し、その論文が話題になりました。
カブトムシは大顎でシマトネリコの樹皮を削り、そこから出る樹液を食べに来るのです。
通常は夜行性のカブトムシですが、シマトネリコの場合、昼間にも樹液を求めてやってくることが多いです。
さらに、シマトネリコの樹液はスズメバチも好みます。
雑木林にあるコナラやクヌギの樹液に集まる虫を見ると、カブトムシやクワガタとスズメバチが同じ場所にいることが多いことがわかります。
シマトネリコの花もアシナガバチを引き寄せるため、「夏の間にアシナガバチが多くて怖い」という声もよく聞かれます。
このように、シマトネリコは多くの虫を引き寄せるため、それが原因で後悔する人も少なくありません。
自生しやすい種を飛ばす
シマトネリコの周囲には多くの幼木が自生しやすく、これが大きなデメリットとなっています。
その原因はシマトネリコの花にあります。
シマトネリコは夏に白い花を咲かせ、その後秋には種を形成します。
これらの種は風に乗って周囲に広がり、どんな土壌でも発芽して成長します。
例えば、近所の施設の周辺では、わずか30cmの痩せた土壌でもシマトネリコの幼木が多数自生しています。
このように、多くのシマトネリコの幼木が見られます。
さらに、シマトネリコは除草剤にも強く、施設の職員が除草剤を撒いた後でも、シマトネリコだけは元気に育ち続けました。
シマトネリコの種は強い生命力を持ち、わずか2年で2m以上に成長することがあります。
これが隣家や近所にまで広がると、大きな問題となります。
鬱蒼とした見た目になりやすい
シマトネリコは細かい葉で涼しげな印象を与えることがありますが、それはプロの手によって剪定・管理された場合に限ります。
植えた当初は涼しげな印象かもしれませんが、大きく成長すると無数の枝と葉が生い茂り、鬱蒼とした暗い印象を与える木になります。
近所の施設の街路樹として植えられたシマトネリコの写真を見ると、涼しげな印象を受けることはありません。
枝葉が伸び放題で、濃い緑色の葉が鬱蒼とした印象を与えます。
多くの人は庭木の管理を頻繁に行わないため、シマトネリコは最初は涼しげに見えても、時間が経つにつれて鬱蒼とした印象に変わってしまいます。
シンボルツリーとしては個性に欠ける
シマトネリコはかつて非常に人気があり、新築の一戸建てやマンションの庭によく植えられていました。
この人気は2020年代に入っても続いており、未だに新築物件で見かけることが多いです。
この写真のように、多くの人が似たようなシマトネリコの庭を持っているため、個性がないと言われることがあります。
庭木やシンボルツリーを選ぶ際には、自分だけの特別な木を選びたいものです。
しかし、シマトネリコはあまりにも一般的であるため、個性を出すことが難しくなります。
そのため、独自性を重視する人には不向きな木と言えるでしょう。
強すぎる根張り
シマトネリコは非常に強い根を持ち、その根は植木鉢の底を突き抜けるほどです。
成長の速さと同様に、根も非常に速く広がります。
これにより、シマトネリコは地中深く広範囲に根を伸ばし、水道管や電線などの配線に影響を与えるリスクがあります。
写真のように、植木鉢に植えられたシマトネリコでも、細かい根が鉢底から出てくることがわかります。
根の力は鉢を突き破るほど強く、鉢植えで管理しようとしても根が地面に広がることがあります。
シマトネリコの根張りが強いため、伐採や伐根する際には大変な手間がかかります。
プロの植木屋の手を借りなければならない場合も多く、根張りの強さを考慮して広い場所に植える必要があります。
シマトネリコを植えるメリット
これまでシマトネリコを植えることのデメリットについて説明してきましたが、メリットもいくつかあります。
以下にそのメリットを詳しく説明します。
価格が安く手に入りやすい
シマトネリコは市場に多く出回っており、ホームセンターや園芸店、ネット通販などで簡単に購入できます。
そのため、手に入れやすく、価格も安価です。
成長が早いため生産者にとっても育てやすく、大量生産が可能なためコストが低く抑えられています。
庭木にあまり費用をかけたくない方には最適な選択肢です。
洋風・和風問わずどんな庭にも合う
シマトネリコは特定のスタイルに偏らないため、和風庭園にも洋風庭園にも調和します。
幹や枝ぶりが癖がなく、葉も細かいため圧迫感がありません。
そのため、どんな庭にも自然に馴染む木です。
和風庭園の松やモミジ、洋風庭園のオリーブやミモザといった特定のイメージを持つ木とは異なり、シマトネリコは万能な庭木と言えます。
成長が早くリセットが利く
シマトネリコの成長の速さは、剪定ミスや強剪定の後でもすぐに新しい枝葉を伸ばすという利点があります。
例えば、剪定しすぎてスカスカになったり、成長しすぎたために強剪定を行った場合でも、シマトネリコはすぐに元通りの姿に戻ります。
このため、庭木の手入れに失敗してもやり直しがしやすいのです。
これらのメリットを考慮すると、シマトネリコは手軽に取り入れられ、庭のスタイルを選ばない万能な庭木と言えます。
シマトネリコを植える際の注意点
シマトネリコを植えたいと考えている方のために、後悔しないための注意点をご紹介します。
- 家や配管、隣家の境界線から1メートル以上離れた場所に植える
- 年に数回の剪定を見越して、木の周囲を広く保つ
- 専門家に依頼する
家や配管、隣家の境界線から1メートル以上離れた場所に植える
シマトネリコは成長が早いため、自宅や隣家の建物、配管、境界線を越えないように植えることが重要です。
最低でも半径1メートル以内にはこれらの障害物がない場所を選びましょう。
家の近くに植えると、根が建物の基礎に達して家が傾くリスクもあります。
また、落葉や実からの幼木が次々と生えることを防ぐためにも、隣家と十分な距離を取る必要があります。
定期的に剪定して成長をコントロールすることで、これらの問題を防ぐことができます。
年に数回の剪定を見越して、木の周囲を広く保つ
シマトネリコは頻繁に管理が必要な木です。
1年で1メートル以上成長することもあるため、年に少なくとも2回の剪定を行うことを計画しましょう。
最も適した時期は、夏前の6~7月と、新芽が芽吹く前の3~4月です。
この時期に剪定することで、成長を抑えることができます。
また、成長が早すぎる場合は「芯止め」を行い、主幹を切って成長を抑制します。
剪定作業を行うためには、木の周囲に低木や下草がない状態が望ましいです。
足元が狭いと作業がしにくく、幼木が生えてきた場合の除去も困難になります。
足元を広く保つことで、剪定作業が楽になります。
専門家に依頼する
シマトネリコの管理は専門的な知識と技術を要することが多いため、植木屋さんや造園業者に依頼するのがおすすめです。
彼らの助けを借りることで、シマトネリコの健康を保ちながら、美しい庭を維持することができます。
特にシマトネリコは手入れが欠かせない木なので、どこに植えるかをプロに相談するのは非常に重要です。
同じプロに剪定や伐採もお願いすれば、スムーズに管理ができます。
シマトネリコの代わりにおすすめの常緑樹
「シマトネリコを地植えするのはやめよう」と感じた方のために、シマトネリコの代わりになる常緑樹をご紹介します。
- ビバーナム・ティヌス
- ソヨゴ
- 四季咲きモクセイ
これらの木は共通して「成長が遅い」「葉を落としにくい」という特徴を持ち、管理がしやすい庭木です。
ビバーナム・ティヌス
- 最大樹高: 約3メートル
- 日照条件: 日向、半日陰、日陰のいずれでもOK
- 特徴・備考:
- 春には白い花、冬には濃紺の実と深緑の葉、赤い幹のコントラストが楽しめる
- 生け垣として使われるほど葉が密に茂る
- 病害虫の被害がほとんどない
ビバーナム・ティヌスは、春に咲く白い花と冬の濃紺の実が美しい中低木です。
成長が非常に遅く、最大でも3メートル程度にしかなりません。
病害虫にも強く、日照条件や土壌を問わず育てやすい木です。
ただし、小さな葉が密に茂るため、一見すると地味で暗い印象を受けることもあります。
ビバーナム・ティヌスを手に入れるには?
ビバーナム・ティヌスは最近取り扱いが増えていますが、まだ一般的ではありません。
成長が遅いため、大きく育ったものは店頭では稀です。
ネット通販での購入がおすすめです。
ソヨゴ
- 最大樹高: 約10メートル
- 日照条件: 日向、半日陰、日陰どこでもOK
- 特徴・備考:
- 控えめな小花と赤い実が楽しめる
- 暑さ・寒さに強い
- 美しい樹形と小ぶりで波打つ葉が和洋どちらの庭にも合う
ソヨゴは美しい樹形と波打つ小さな葉が特徴の常緑樹です。
成長は非常に遅く、1年に約10cm程度伸びません。
それでも、暑さや寒さに強く、雪にも耐える強健な木です。
ただし、風通しが悪い場所ではカイガラムシや黒点病が発生しやすいという難点がありますが、全体的に病害虫に強く育てやすい木です。
ソヨゴを手に入れるには?
ソヨゴは最近人気が出てきたため、ホームセンターや園芸店で購入可能です。
近くに店舗がない場合は、ネット通販でも豊富に取り扱っています。
四季咲きモクセイ
- 最大樹高: 約5~6メートル
- 日照条件: 日向、半日陰、日陰どこでもOK
- 特徴・備考:
- 年間を通じて白い花が良い香りを放つ
- 枝葉が豊かに広がり、放任すると丸い樹形になる
- 非常に珍しく、ほとんど見かけない
四季咲きモクセイは、秋に香り高いオレンジ色の花を咲かせるキンモクセイの仲間であるギンモクセイの品種改良版です。
1年に3~4回、白い控えめな香りの花を咲かせますが、キンモクセイほど強い香りではありません。
枝葉が横に広がりやすく、放任すると丸く育つため、透かし剪定をすることで美しい形に保つことができます。
病害虫にも強く、育てやすいですが、非常に珍しいため、市場で見かけることはほとんどありません。
四季咲きモクセイを手に入れるには?
四季咲きモクセイは非常に珍しいため、一般的な店頭ではほぼ見かけません。
ネット通販での購入がおすすめです。